京都工芸繊維大学・京都グリーンラボ
ムーンショット目標6課題「スケーラブルな高集積量子誤り訂正システムの開発」
合同キックオフシンポジウム 開催報告


 

        

日時:
場所:
主催:
協賛:
参加者:

2022年11月18日(金) 13:00-17:45
京都工芸繊維大学 60周年記念会館1階記念ホール(Webexによるハイブリッド開催)
京都工芸繊維大学 京都グリーンラボ
IEEE SSCS Kansai Chapter, IEEE CASS Kansai Chapter, IEEE CS Kansai Chapter
会場参加者:39名、オンライン参加者:55名


           
開会の挨拶
吉本理事, 工繊大
京都グリーンラボ
概要説明
小林ラボ長, 工繊大
京都グリーンラボ
空飛ぶ車
山川教授, 工繊大
ムーンショット6
概要説明
北川PD、阪大教授
ムーンショット6
量子ビット制御
三好CTO, キュエル
招待講演
Prof. JC. Bardin
Google Quantum AI


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セッション1 京都グリーンラボ
開会挨拶 吉本昌広 教授 (京都工芸繊維大学・理事):
大学内の連携を進めることを目的に、未来デザイン・工学機構内に3つのラボを設け推進。その一環の活動でJSTムーンショット目標6に採択された。ラボの中に外から大きな風を吹かすことが期待できる。
全体説明 小林和淑 教授 (京都工芸繊維大学・グリーンラボ長)
    京都グリーンラボの目玉は近領域研究である。「近しくても遠かった」研究を融合して,新しい研究を立ち上げる。今年度後期より京都グリーンラボ運営委員を代表者として7つの近領域研究を紹介する。
近領域研究 各研究テーマ代表者よりテーマの提案背景や狙いおよび学内連携体制を紹介した。
 1-1 「ペロブスカイト系材料によるマイクロLEDディスプレイ」  西中浩之 電気電子工学系准教授 
 1-7 「半導体を利用した微生物人工光合成によるCO2還元」 西中浩之 電気電子工学系准教授
 1-2 「微細加工技術を駆使した有機/無機ハイブリッドフォトニクスの新奇展開」 山下兼一 電気電子工学系教授
 1-3 「スマートギヤの開発」 射場大輔 機械工学系教授
 1-4 「数値計算にサポートされた新しい計測技術の開発」 高木知弘 機械工学系教授
 1-5 「空飛ぶクルマ高精度リアルタイムシミュレーション技術構築」 山川勝史 機械工学系教授
 1-6 「社会・産業インフラ維持のための自律的サイバーフィジカルシステム」 増田 新 副ラボ長 副学長
機械工学系教授


セッション2 ムーンショット目標6課題、「スケーラブルな高集積量子誤り訂正システムの開発」
開会挨拶 プログラムディレクター 北川 勝浩 教授 (大阪大学 大学院基礎工学研究科)
目標6「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」の目指す姿、シナリオ、および体制(ポートフォリオ)がご説明された。
また、世界中で各種量子コンピュータの開発にしのぎが削られており、国として量子コンピュータ開発を増強すべく、2022年に小林PMのプロジェクトテーマ等が追加され、ハードウェア:7テーマ、通信ネットワーク:3テーマ、誤り耐性:2テーマの計12テーマで目標6を推進することがご紹介された。
 
 ※関連する会議開催の案内
 ・ QUANTUM INNOVATION 2022: 2022.11.28-30 オンライン開催 詳細はこちら
 ・ ムーンショット目標6 国際シンポジウム: 2023.7.18-20 東京開催予定
課題概要 プロジェクトマネージャー 小林和淑 教授 (京都工芸繊維大学 電気電子工学系)
    課題提案の背景、量子コンピュータとの縁、および量子コンピュータの抱える課題(解ける問題が限られる、そもそも壊れやすい情報を扱っており不安定)が説明された。その上で、課題の研究体制が紹介された。最後に、世界一の量子コンピュータ制御・訂正装置を開発すること、若手研究者を育て10年・20年後のアカデミア或いは企業のリーダーを生むことを目指すと示された。
開発項目
項目1  エラー訂正バックエンド 佐野 健太郎、理研 プロセッサ研究チーム チームリーダー
  下記課題3件の概要、研究計画とマイルストーンならびに現状の進捗が報告された。
・課題1:ハードウエア向け誤り訂正アルゴリズムとFPGAによるバックエンドシステム
・課題2:ASIC向けエラー訂正アルゴリズム
・課題3:ディベンダブルなエラー訂正バックエンドの実現

項目2  量子ビット制御フロントエンドの先鋭化 三好 健文、キュエル CTO
  量子ビット制御フロントエンドの目標(下記)と課題ならびに現状が報告された。
目標:スケーラブルな古典-量子インターフェースシステムの実現
・量子ビットの制御・処理とバックエンドへのデータ供給
・高精度な信号の送受信と送受信制御装置間の同期

項目3 /Cryo CMOS集積回路によるスケーラブルな古典-量子インターフェース 塩見 準、大阪大学大学院 情報科学研究科 准教授
  研究概要と2025年の目標、開発課題3件ならびにマイルストーンが報告された。
・課題1:光集積回路の低温領域における動作可能性の探求
・課題2:Cryo CMOS PDKの構築
・課題3:Cryo CMOS集積回路設計基盤の構築

項目4 フロントエンド・バックエンドのASIC/SoC化 小林 和淑、京都工芸繊維大学 電気電子工学系 教授
下記課題4件の概要ならびに2025年の目標が報告された。
 ・課題1:フロントエンドのデジタル回路のASICと統合SoC化
 ・課題2:フロントエンド向けRF回路
 ・課題3:フロントエンド向け高速DAC
 ・課題4:フロントエンド向け高速ADC
     


セッション3 招待講演
招待講演 1  「量子コンピュータの現状と誤り耐性量子コンピュータに向けた展望」 藤井啓祐、(大阪大学大学院 基礎工学研究科 教授)
  2014年Googleの発表から現在までの量子ビット数の拡大と将来的展望を紹介された。また、量子ビットはノイズに弱く、実運用における誤り訂正の考え方(エラー検出、パリティ検出)や閾値の設計などについて解説いただいた。さらに、大規模な誤り耐性量子計算時代に向けて量子コンピュータの階層構造化によるエラー場所の推定と量子誤り訂正の取り組みを紹介された。量子誤り訂正においては、物理量子ビットのエラー確率を下げて使える量子ビット数を増やすとともに、古典制御側のシステムでエラー訂正の要求スペックに耐えうるスペックを得ることが今後重要であり、2023年は量子誤り訂正元年であり、いろいろなレイヤーの研究者が意見を出し議論することで進展するとのコメントをいただいた。

招待講演 2  「大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発」 水野 弘之 (日立製作所株式会社  主管研究長 兼 日立京大ラボ長)
  MS6課題「大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発」の狙い、アプローチ、および課題についてご紹介いただいた。シリコンの2次元量子ビットの作製フローとしては、量子ドット形成後、初期化→スピン操作→読出しの手順で量子ビット操作を行う。またスケーラビリティを両立させることが重要である。小規模実験回路による量子ビット演算を研究項目として進めている。古典コンピュータ開発の歴史を振り返り、量子コンピュータの立ち位置を確認した。

招待講演 3 “State of the art and challenges in control and measurement of superconducting quantum computers” Joseph Bardin (Professor, Google Quantum AI and The Univ. of Massachusetts Amherst)
  Googleの量子コンピュータのロードマップに沿った最新の取り組み(2019年に発表した54QビットのSycamore量子コンピュータ(54Qビット)の2D構成や制御設計など)を解説いただいた。また、将来展望として1MQビットの挑戦的取り組み概要をご紹介いただいた。